コト|2023/08/28
エリコ:いまはフリーランスとして編集や企画の仕事があるということだけど、表現者としての栞さんと仕事とは、どのくらいの割合なの?
栞:それが最近就職したんですよ! precogという演劇の制作会社に勤めていて、新規事業THEATRE for ALL「シアター・フォー・オール」の立ち上げに関わっています。ダンスや演劇、映画やメディアアートでバリアフリーの情報保障(手話、字幕、音声ガイドなど)のある作品を鑑賞できるオンラインシアターを作っています。
コロナ以前から障がいや、言語や文化などの「違い」を理由に、これまで舞台や文化にアクセスできなかった人たちのアクセシビリティを高める入口を作るプロジェクトなんです。
立ち上げのために、障がい当事者の方にインタビューリサーチなどをさせていただいたのですが、視聴覚の情報保障は世の中に少しはあっても、精神障害や発達障害の人たちが舞台を鑑賞する仕組みはほとんどなくて、議論すらされてこなかったのだということを教わったり。
エリコ:暗いところが苦手とか、静かにすべきところで大声出したりとかあるもんね。でもその人たちにだって舞台を見に行く権利はありますね。
栞:そうなんです。このプロジェクトでは当事者団体や支援団体、作業所や学校の人にもインタビューして課題を聞きだして、どうしたら本当の意味でバリアフリーとかユニバーサルデザインと言えるような舞台芸術の仕組みが作れるかに取り組んでいます。
取り組みつつ、動画も配信していくような事業です。こうすることで舞台にアクセスできる人も増えますよね。するとそのコンテンツを出しているアーティストのお客さんも増えるわけで…。
エリコ:すごい。なんか壮大な三方よしのイメージです。
栞:前置き長くなったんですけど、このプロジェクトがまたすごく大変で、答えのないものだから、昼夜問わずの時もあります。
エリコ:今のきくと「わ、壮大!」って思ったけど、忙しさはどうなの? パフォーマンスどころか、また寝る時間なくなってない?
栞:「これ、本当にやりたい仕事だ!」と思ったので引き受けました。
エリコ:でもやっぱり半年くらいの間に「自分の機嫌を取ることがすごく大事」って気付いたわけでしょ。そのあたりのせめぎあいみたいなのは…。
栞:むっちゃせめぎあってます。でも前と違うのは誰かのせいにしなくていいように持っていってることです。それは仕事だからやるんじゃなくて、自分がそうしたいと思ったからやる、という。
自分が決めてやろうと思ったことと、人と約束して筋を通したいこと以外をやる必要はないと思うんです。だから「やるって決める」ことにはすごく慎重になっています。
自分の機嫌を損なわないように。誰かに何か言われたからやる、ということをもっと意識的にやめていこうと思っているので。
エリコ:その方が軸を取りやすくなるよね。じゃないと結局評価自体も、誰かが認めてくれたらよくて、認めてくれないものはダメ、みたいなことになっちゃう。
常に自分の軸で話ができるようにしておきたい。コロナの時代にそういうことに気付いた人、たくさんいるんじゃないかな。
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